私と、父と、ジェフユナイテッドと。
お題「#応援しているチーム」
物忘れの激しい私が、強烈に覚えている記憶がある。
私が幼い頃、父親はよく私をサッカー場に連れていった。父はその頃、サッカーが一番好きなスポーツで、私はそれに付いていく形で、スタジアムに行った。
そのスタジアムでは、父は別人のようだった。私は父に怒られた記憶は1mmもないが、スタジアムではヤジを飛ばし声を出し応援をし、全力でチームを応援していた。幼いころの私は、その姿が少し怖く写ってしまい、あまりスタジアムという場所にいいイメージを持っていなかった。そこから、「サッカー」に対しても、あまりいいイメージを持っていなかった。
でも、あの空気は今でも鮮明に覚えている。夕方の西日が射すスタジアムに、人々の声が響き渡り熱気に包まれる。やけにボロく感じたスタジアムの内部と、簡易的な座席。全力で駆け回る選手だ。そういう風景は、あの頃、しっかりとココロに焼き付いた。
そして時は経ち、私は大学生になり、サッカーの面白さに今更気づくことになる。
サッカーにハマった私が、まずしたことはスタジアムに行くことだった。小さい時に感じたあのスタジアムの雰囲気を味わってみようと思ったのだ。しかも一人で。オタクの行動力はすごい。決めたら即行動。
私は、あの頃に父が全力で応援していた地元チーム「ジェフユナイテッド」のスタジアムに向かった。生憎、私が小さいころに行っていたスタジアムとは場所も施設も変わっていたが、中に入ると、あの時と変わらない「熱気」と「景色」があった。
懐かしくもあり、嬉しくもあった。そしてサッカーを生で見ることの楽しさを約10年越しに、初めて知った。
そして、私はサッカー観戦にのめり込んだ。チャントを高らかに歌い、ヤジはしないが、精一杯声を出して応援をした。
ああ、そうか、と。あの小さいころに、父がみていた景色を、私も見ているんだ、と。選手が懸命に駆け回るフィールドを見ながら、いつのまにか、あの時の父親の姿が自分に重なった。気恥ずかしさもありながら、納得感もあった。
残念ながら、私がサッカーを好きになった頃には、父はサッカー観戦はやめていた。野球を好むようになり、ジェフのことは多少気に掛ける程度の興味となった。私がたまにサッカー観戦の話をすると、多少興味を示す程度だ。少しだけ寂しくもある。
私には小さな夢がある。いつか私と父でもう一度スタジアムで生でサッカー観戦することだ。今ならきっと私は父の気持ちがわかると思う。そして親子で全力で選手に向かって応援の言葉を叫ぶのだ。きっと、幼いころ見た景色よりも、心に深く刻み込まれるだろう。